畑の温暖化ガス「N2O」を削減するダイズ・根粒菌共生系開発 東北大ら4者

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、帯広畜産大学、東北大学、理化学研究所は9月5日、共同研究グループが、N2Oを分解する能力の高い根粒菌をダイズに共生させる技術を開発したと発表した。ダイズ根粒が崩壊する過程で放出されるN2Oを減少させる。

N2O削減根粒菌共存に向け、「共生不和合性現象」に着目

土壌微生物である根粒菌は、ダイズなどのマメ科植物が根に形成する根粒の内部に共生し、大気中の窒素を栄養分として植物に供給する有用微生物で、一部の菌は、N2Oを窒素に分解する能力を有する。

帯広畜産大らの発表によると、圃場の土壌中に存在する土着根粒菌の多くは、N2O分解する十分な能力を持っていない。また、ダイズを植え、N2O削減根粒菌を接種した場合には土着根粒菌との感染競合が起こり、大多数の根粒に土着根粒菌が共生。結果として、N2O削減根粒菌が共生する根粒の割合が低くなり、N2O削減能力を十分に発揮できずにいた。

そこで、共同研究グループは、根粒共生にみられる「共生不和合性現象」を利用して、N2O削減根粒菌が共生する根粒の割合を高めたダイズ共生系を開発した。

不和合性現象とは、特定の不和合性遺伝子を持つダイズが、特定の根粒菌が分泌する「エフェクター」と呼ばれるタンパク質を認識し、その根粒菌の感染をブロックして根粒の形成を阻止する現象のこと。

共同研究グループは今回、2種類の不和合性遺伝子を併せ持つものと、自然変異によりエフェクターを作らなくなったN2O削減根粒菌を組み合わせた。エフェクターを作らない根粒菌は、不和合性遺伝子を持つダイズへの優占的な共生が可能で、圃場試験では、N2O 削減根粒菌の根粒占有率は64%を記録、N2O放出量は、削減根粒菌を接種していない試験区の26%にまで減少した。

共同研究グループは、今回の成果は環境負荷の少ないダイズ生産につながり、地球温暖化抑制に貢献できるとしている。

N2O削減根粒菌と土着根粒菌の関係性(出所:帯広畜産大学)

N2O削減根粒菌と土着根粒菌の関係性(出所:帯広畜産大学)

人為的N2O排出量のうち約6割は農業活動によるもの

N2Oは、CO2の265倍の温室効果を示す主要なGHGの一つ。「IPCC第5次評価報告書2013」によると、農業活動は、人為的N2O排出量の約60%を占め、中でも農地からの放出が大きな割合を占めるという。また、窒素は植物の生長に必須な栄養源だが、作物栽培のために農地に投入される大量の窒素肥料や収穫されずに残る作物残渣からN2Oが発生する。

そのため、農地からのN2O放出量削減に関する研究開発は、グローバル共通の重要課題となっている。

【参考】
帯広畜産大学―温室効果ガス削減効果を高めたダイズ・根粒菌共生系を開発 -農地からの一酸化二窒素放出を抑制する革新的技術-

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/9b6d4b2c-e932-46fc-a735-5b89deac7e05

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