愛南町の真珠養殖業、国内初のカーボンクレジット認証を獲得 — 温暖化防止への新たな一歩
海洋生態系による炭素吸収、通称「ブルーカーボン」の重要性が国際的に高まる中、愛媛県愛南町の真珠母貝養殖業者が取り組むプロジェクトが、2023年12月、二酸化炭素(CO2)排出量の取引を行うカーボンクレジット制度「Jブルークレジット」の認証を受けました。これは四国地方で初めて、そして全国の貝類養殖いかだにおいても初の事例です。
「Jブルークレジット」制度は、2020年に神奈川県のジャパンブルーエコノミー技術研究組合によって設立されました。この制度は第三者委員会による厳格な審査を経て、クレジットの認証、発行、管理を行っています。2022年度までに、主に藻場の再生を目的とした全国21のプロジェクトが登録されています。
愛南漁協、家串真珠母貝生産組合、愛媛大学南予水産研究センター、町の4者が共同で申請したこのプロジェクトは、真珠母貝養殖が盛んな家串湾を中心に展開されています。養殖業者は長年、幹縄いかだに繁茂する海藻を取り除き、特定の海域「藻捨て場」に移して自然分解させることで、ブルーカーボンの生成に貢献してきました。
東京の丸紅フォレストリンクスの協力を得て、家串湾内のデータを分析した結果、2023年12月には、2世帯分の年間CO2排出量に相当する5.9トンのクレジットが認められました。愛南漁協御荘支所によると、内海地域の真珠母貝養殖業者は約90軒あり、1985年の最盛期の3分の1以下に減少しています。近年はアコヤガイの大量死や後継者不足に悩まされていますが、このプロジェクトによる活性化への期待が高まっています。
前田浩支所長は「このクレジット認証を機に、愛南の真珠母貝養殖への注目が高まることを期待している」と述べ、認証対象エリアの拡大を視野に入れています。また、生産組合の前田正人組合長は「日々の取り組みが評価されたことは嬉しい。真珠養殖は世界に誇る産業であり、地球環境問題への貢献を若い世代に知ってもらいたい」と述べています。
町水産課はこの評価を「産業活動が脱炭素社会への寄与と認識される画期的な評価」と位置づけ、クレジット購入者の公募を進めています。クレジット販売によって得られる資金は、環境保全、持続可能な水産業の確立、水産人材の育成に活用される予定です。
【参考】
愛南町ホームページ 記者会見・プレスリリース.
https://www.town.ainan.ehime.jp/kurashi/chosei/chocho/kaiken/press-release1222.html