特許庁(JPO)は9月26日、気候変動対応や女性・若者活躍のテーマにおける知財活用でフロントランナーとなる企業を表彰する知財アワード「EXPO2025 JPO-WIPO AWARD」において、受賞企業5社を決定したと発表した。気候変動部門では、SPACECOOL(東京都港区)と竹中工務店(大阪府大阪市)の2社が選ばれた。
選定理由は、知財活用による社会課題の解決
同アワードは、特許庁と世界知的所有権機関(WIPO)が連携し、大阪・関西万博の開催に合わせ今回に限り創設された賞で、SDGsなどをテーマに社会課題の解決のためのイノベーションを生み出し、より良い未来社会をデザインしていこうとする企業を選出した。
同アワードの授賞式は10月4日、大阪・関西万博で開催される「SDGsに向けた知財活用の促進等に関する国際フォーラム」内で行う。
放射冷却素材でCO2削減、オープン&クローズ戦略を展開
SPACECOOL社は、自然界の放射冷却現象を技術化し、日中のゼロエネルギー冷却を可能にする放射冷却素材「SPACECOOL」を開発するスタートアップ。
同社の「SPACECOOL」は、独自の光学設計により太陽光の反射率最大95%、放射冷却の原理による宇宙への放射率最大95%を実現する。サウジアラビアでの実証では空調エネルギー消費量を平均29%削減し、15年間でCO2排出量21tの低減が推計されたという。
受賞にあたっては、放射冷却素材によるCO2削減効果とともに、知財活用における協働促進と権利保全のバランスを図るというオープン&クローズ戦略が評価された。
なお同社は、3月に「東京ベンチャー企業選手権大会」において、最優秀賞にあたる東京都知事賞を受賞するなど、多くの賞を受賞をしている。
CO2削減や炭素貯蔵を実現、知財戦略を実行
同じく気候変動部門で受賞した建設会社の竹中工務店は、環境配慮型コンクリート「ECMコンクリート®」と耐火集成材「燃エンウッド」などの脱炭素技術を複数の特許群で保護し、共同開発による市場創出と省CO2効果を実証している。審査員は、受賞のポイントとして、脱炭素技術によるCO2削減や炭素貯蔵の実現と知財戦略の実行を挙げた。
ECMコンクリートは材料由来のCO2排出量を最大60%削減し、2015年以降115件・36.2万m3の適用で計6.5万tのCO2削減を達成。燃エンウッドは中高層木造建築20件以上で4400m3の木材利用と3200tの炭素貯蔵という実積がある。
女性・若手社員が活躍する機会を創出
女性活躍推進部門では、ナリス化粧品(大阪府大阪市)とファイトケミカルプロダクツ(宮城県仙台市)が、若者活躍推進部門では鹿島建設(東京都港区)が選ばれた。
東北大学発のスタートアップ企業であるファイトケミカルプロダクツは、油脂産業で発生する未利用資源の高付加価値化に着目。イオン交換樹脂法の基盤技術発見から装置化や高付加価値製品とバイオ燃料のマルチ生産プロセスなど、未利用バイオマス資源のアップサイクル技術の社会実装を目指している。
鹿島建設は、企業内における知的財産の重要性の認識向上を目的とした知的財産表彰制度の設立や、若手社員によるCO2削減や耐震・制震分野における多数の特許出願、自動運転建機システムやカーボンネガティブコンクリートなどの社会課題解決技術を牽引している点が評価された。
【参考】
経済産業省―気候変動対応や女性・若者活躍のテーマにおける知財活用でフロントランナーとなる企業を表彰するEXPO2025 JPO-WIPO AWARDの受賞者を決定しました
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/54a786f1-95b8-4a0b-b945-fdf828fcfb21