経済産業省は10月11日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とともに開催した「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)2024」(10月9日・10日)の結果を報告した。地球温暖化問題解決の鍵となるグリーン・イノベーションについて議論する国際会議で、93の国・地域から約1,700人が参加した。
プラネタリー・バウンダリーにおけるエネルギー移行などを議論
メインテーマは「プラネタリー・バウンダリーをグリーン・イノベーションでより良く生きる(How to Live within the Planetary Boundaries through Green Innovation)」。グリーン・イノベーションに焦点を置き、人類が生存できる安全な活動領域とその限界点(プラネタリー・バウンダリー)とエネルギー・トランジション、CO2除去などの気候安定化技術、水素の利活用への備え、原子力エネルギーなどについて議論が行われた。
一連の議論を踏まえ、ICEF運営委員会によるステートメントの発表と、先端技術を用いてクリーンエネルギーに移行するための2024年「人工知能(AI)と気候変動緩和ロードマップ 第2版」(ドラフト版)が公開された。このロードマップでは、カーボンニュートラル達成に向けて短期的・長期的に貢献する主要な革新的技術の道筋、手法を提言している。
ロードマップは、10月21日まで実施するパブリックコメントを反映し、11月にアゼルバイジャンで開催される「国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)」で最終版が発表される予定。
航空や原子力なども新しく盛り込んだロードマップ第2版
「AIと気候変動緩和ロードマップ 第2版」は2023年に発表された2023年ロードマップのバージョン2.0となる。2023年ロードマップでは、気候変動対策としてAIの利用が期待されている分野である温室効果ガス(GHG)排出モニタリング、電力系統インフラ、製造業、材料開発、フードシステム、輸送などにおけるAI活用の可能性を探るとともに、AI活用にともなう障壁や課題について検討し、AIが気候変動緩和へ貢献するための道筋を提示した。
第2版(ドラフト版)では、航空、民生部門、CO2回収、原子力、大規模言語モデル(LLM)、極端気象への対応など、昨年取り上げられなかった新しい話題を盛り込んでいる。また、電力システム、フードシステム、製造業部門、道路輸送、GHG排出モニタリング、材料イノベーションなど、昨年取り上げた内容も更新している。各章で具体的かつ実行可能な提言を示し、気候変動への対応にAIをいかに活用できるかについて、詳細で包括的な提言を提供している。
ICEF運営委員会によるステートメント
ICEF運営委員会によるステートメントでは、地球環境の限界点ともいえるプラネタリー・バウンダリーについて、危機感を増大させる一方で、イノベーションと協力の強化を求めるより強力な論拠を提供し、チャンスが生まれていると述べている。
グリーン・イノベーションの最もエキサイティングな推進要因の例として、気候変動への耐性を高めるAI、エネルギーシステムの再設計、産業バリューチェーンの変革、景観に基づく食糧・農業システム、金融構造を含むグローバル・ガバナンスの革新、革新的な解決をリードする、若い世代の野心とインスピレーションの向上などを挙げた。
グリーン・イノベーションについて議論するICEF
ICEFは、エネルギー・環境分野のイノベーションにより気候変動問題の解決を図るため、世界の産学官のリーダーが集結する国際会議として、日本のイニシアチブにより2014年に設立された。2014年以降、経済産業省とNEDOが毎年ICEFを開催している。
第11回目の年次総会となるICEF 2024は、グリーントランスフォーメーション(GX)の実現を目指し、エネルギー・環境関連の国際会議を集中的に開催する「東京GXウィーク」の取り組みの一環として、10月9日・10日の2日間にわたりハイブリッド形式開催された。
第11回年次総会の概要
岩田 和親経済産業副大臣は、この会議の冒頭で挨拶を行い、2050年にカーボンニュートラルを実現する目標を達成するためには、2030年へ向けたGXの加速が重要であること、世界情勢が大きく様変わりする中で、イノベーションの創出が重要な鍵となること、世界のカーボンニュートラル達成に向けた脱炭素の取り組みが更に推進されていくことを期待することを述べた。
2日間にわたる会合では、ヨハン・F・ロックストローム ポツダム気候影響研究所所長、ジャン=エリック・パケ駐日EU代表部大使、バーツラフ・シュミル特別名誉教授、ヘレ・クリストファーセン トタルエナジーズアジア地域代表のほか、エネルギー・環境に関する世界の第一人者が13のセッションに登壇した。また、多くのセッションにおいて、若手世代(ヤング・イノベーター)が議論に参加した。
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/790152eb-6400-4b38-b484-fa88a0147c67