三菱総研ら、ベトナムでの稲作に農業残渣由来バイオスティミュラントを活用

三菱総合研究所(東京都千代田区)、AGRI SMILE(同・新宿区)、ベトナム現地企業のPANの3社は9月8日、ベトナムにおける農業資材「バイオスティミュラント」資材を活用したコメ生産への効果を検証する実証事業で、3社間の覚書を締結したと発表した。

AGRI SMILEが提供する植物の成長や耐性を高めるバイオスティミュラント資材を活用し、気候変動への適応と肥料利用の効率化を検証する。

日本の農業残渣由来のバイオスティミュラントでコメ生産実証

バイオスティミュラント資材は、植物に散布することで植物の免疫力を活性化する効果があり、植物自らの生理機能により環境ストレスに強くなる効果がある農業資材。地球温暖化による栽培課題の対策として、欧米で導入が進められている。

今回の実証で3社はベトナム北部フンイエン省において、AGRI SMILEが提供するバイオスティミュラント資材を用いてコメ生産の気候変動対策・肥料吸収効率化などの効果を評価する。AGRI SMILEのイオスティミュラント資材は、同社特許技術により植物内の作用メカニズムが科学的に解明されているほか、日本国内で処分が課題となっている農業残渣を原材料として再利用できるというメリットがある。

同実証において、三菱総合研究所は、現地子会社と連携した、関係機関との連携・調整支援を行う。AGRI SMILEは、バイオスティミュラント資材の提供、圃場実証でのアドバイス、ベトナムでの流通に向けた各種手続きの遂行を、PANは、圃場実証の遂行・管理、ベトナムでの流通に向けた各種手続きに関する助言を担当する。

ベトナム南部でも実証予定、資材流通へも取り組む

3社は、2025年秋以降にベトナム南部カントー市での実証も予定。これと並行して、AGRI SMILEのバイオスティミュラント資材をベトナムで流通させるための仕組みづくりにも取り組む。

官民フォーラムで計12件の覚書締結を発表

なお、今回の覚書は9月4日に開催された日越農業協力対話(官民フォーラム)にて、小泉 進次郎農林水産大臣とベトナムのタン農業環境大臣立会いの下に交わされた。同事業を含め12件の取り組みが発表された。

低肥料で持続可能な農法で、農産物の収量向上を図る技術が求められる

気候変動などにより、世界的に農作物の収量が危ぶまれ中、収量を確保するために行われる肥料大量投入やそれを起因とした農地ダメージや環境問題、肥料価格の高騰などが危惧されており、低肥料かつ持続可能な農業により生産性を高めることが求められている。

バイオスティミュラント資材は、地球温暖化による栽培課題の対策として期待されており、特に欧米では、気候変動対策の1つとして導入が普及。2012年に、欧州委員会がバイオスティミュラントの基礎となる定義を発表して以降、同資材に関わる定義やルール化が進められてきた。日本では農林水産省が2025年5月30日、「バイオスティミュラントの表示等に係るガイドライン」を策定。農業者にとって効果のあるバイオスティミュラントを安心して選択・使用できる環境を整えた。

(出所:農林水産省)

(出所:農林水産省)

【参考】
農林水産省ー日越農業協力対話ハイレベル会合・官民フォーラムの結果概要について

【引用】
環境ビジネス.  https://www.kankyo-business.jp/news/057b8d3d-fae7-4e05-a545-a927fb293376

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