環境省は11月21日、「日本の気候変動イニシアティブ2025」を公表した。ブラジル・ベレンにおける国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第30回締約国会議(COP30)で、石原 宏高環境大臣が打ち出したもの。自然とのシナジー、技術や市場を活用したソリューション、温室効果ガスインベントリの整備など透明性向上の3本柱で、アジアを始めとする世界の脱炭素化に貢献していくことを示した。

COP30で「日本の気候変動イニシアティブ2025」を公表した石原 宏高環境大臣(出所:環境省公式X)
この中で政府は、パリ協定の1.5度目標に向けた世界を目指すことを改めて表明。2023年度の温室効果ガス(GHG)を、2013年度比で27.1%削減したことを報告し、今後もNDCに基づき、GHG削減対策を着実に実施するとした。
特に、世界の脱炭素への日本の貢献として「シナジー」「ソリューション」「インベントリ」の3つをあげ、これまでの推進策と今後の方針について打ち出した。
自然とのシナジーを重視
同イニシアティブで掲げた柱の1つ、「自然とのシナジー」では、ブルーカーボンの活用や気候変動と生物多様性保全を両立する適応ビジネスの展開、SATOYAMAイニシアティブや自然共生サイトの取り組みのほか、世界最多198社(2025年9月時点)がTNFD開示を宣言するなど日本の積極的な取り組みを強調。今後も、企業の気候変動・自然・循環性情報の開示を促進するとした。

1つ目の柱「シナジー」について(出所:環境省)
技術・市場を活用したソリューション
2つ目の柱である「技術と市場を活用するソリューション」では、再生可能エネルギーの導入促進、省エネルギー技術の普及、二国間クレジット制度(JCM)によるGHG削減の国際展開などを示した。具体的には、JCMを通じて2040年までに累積2億t程度の国際的な排出削減・吸収量を実現するとし、脱炭素社会の実現に向けた都市間連携事業や 国際機関との連携によるプロジェクトを形成する。
また、脱炭素に貢献する新技術の開発・実証及び実装に関して、スタートアップ企業などの参画を得つつ、革新的な取り組みを強力に推進。エネルギーの徹底、電化の促進と電力の脱炭素化、次世代型太陽電池等により脱炭素を先導するとした。

2つ目の柱「ソリューション」について(出所:環境省)
透明性向上へ情報基盤を強化、IPCC総会誘致へ
3つ目の柱として掲げた「透明性向上」では、温室効果ガス排出量や吸収量の正確な把握のためのインベントリ整備、観測技術の活用、データの国際的な共有体制の強化を進める。特に、6月に打ち上げた観測技術衛星GOSATーGWの活用により各国の1年間に排出・吸収するGHG量を取りまとめたデータの精度向上に貢献。ASEANにおける脱炭素政策形成の支援やブルーカーボン、CO2吸収型コンクリートなど新たな分野でのGHG吸収量の計上にも取り組む方針を示した。
また、透明性向上の一環として、2027年に予定するIPCC総会の日本開催誘致を表明した。IPCC総会は、これまでに2014年に横浜市、2019年に京都市で開いたことがある。

3つ目の柱「透明性」について(出所:環境省)
【参考】
環境省―「日本の気候変動対策イニシアティブ2025」の公表について
【引用】
環境ビジネス. https://www.kankyo-business.jp/news/2339735e-61cc-41ed-8506-927e15f51f80